家を建てるとき、「いつ建てるか」を気にされる方は意外と多いものです。これは単なるスケジュール調整という意味ではなく、「暦(こよみ)」の話になります。六曜や干支、九星気学など、昔から日本人は天の動きと生活を重ね合わせてきました。家づくりという大きな決断に際して、縁起の良し悪しを暦に求めるのは自然な流れと言えるでしょう。
たとえば、「大安の日に地鎮祭を行いたい」というご要望は、今でもよく聞かれます。逆に、「仏滅に着工するのはちょっと……」といったご相談も珍しくありません。建築会社の担当者はこうした暦に関するご相談に慣れていることが多く、地鎮祭や上棟式、引き渡しの日程を調整することは日常的なこととなっています。お日柄を気にすることは、施主の方の安心感にもつながっているのだと思います。
とはいえ、現代では暦にあまり関心を持たない方も増えてきています。実際のところ、暦にこだわりすぎると、天候や工事の進行との調整が難しくなり、工程に影響が出ることもあります。今の建築現場では、工期の管理や効率も非常に重要ですので、縁起と現実のバランスを取ることが求められます。
それでも、暦と住宅建設の関係は完全にはなくなっていません。家を建てるというのは、単なる「建築」ではなく「人生の節目」です。人はそうした節目に、何かしらの拠り所を求めたくなるものです。神社で地鎮祭を行ったり、棟札に願いを込めたりするのは、その気持ちの表れではないでしょうか。暦は、そうした心の動きを支えてくれる文化的な装置の一つとも言えます。
また、暦は季節の移り変わりとも深く関係しています。たとえば、冬場に基礎工事を行うと地面が凍結して作業が難しくなることがありますし、梅雨時には雨が続いて工事が思うように進まないこともあります。こうした気候と暦のつながりは、昔から言い伝えとして残されてきました。暦に刻まれた「気」を読むことは、自然を読み取ることにも通じるのです。
まとめますと、暦と住宅建設の関係は、単なる迷信ではなく、文化と気候、そして人の心が交わる場所にあります。すべてを暦に委ねる必要はありませんが、「せっかくなら良い日を選びたい」と思う気持ちは大切にしたいものです。家は長く住む場所だからこそ、スタートの一歩を気持ちよく踏み出す工夫として、暦を取り入れてみるのも良いのではないでしょうか。
住宅建設時によく話題に上る代表的な暦の六曜について、簡潔に意味をまとめました。
六曜とは、暦の中でも最も一般的で、冠婚葬祭などでも広く用いられる「日柄」の指標です。
【六曜の早見表】
六曜名 | 読み方 | 意味・特徴 | 避けられがちな行事 | 向いている行事 |
大安 | たいあん | すべてにおいて吉。何をするにも良い日。 | なし | 結婚式、地鎮祭、引き渡しなど全般 |
仏滅 | ぶつめつ | 仏も滅するほどの大凶日。不成就日とも。 | 結婚式、着工、契約 | 特になし(静かに過ごす日) |
友引 | ともびき | 勝負ごとは引き分けに。午前・午後は吉、中は凶。 | 葬儀(「友を引く」ため) | 結婚式、地鎮祭(午前や午後に) |
先勝 | せんしょう (せんがち) | 「先んずれば勝つ」。午前中が吉、午後が凶。 | 午後の行事 | 午前の地鎮祭や契約 |
先負 | せんぷ/せんまけ | 「先んずれば負ける」。午前が凶、午後が吉。 | 午前の着工など | 午後からの行事 |
赤口 | しゃっこう/しゃっく | 赤に関係し、火災・ケガに注意。正午前後のみ吉。 | 火を使う作業、祝い事 | 正午ごろの簡単な行事(慎重に) |
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